アクリルをレーザー加工するヒント

CO2レーザーは、アクリルのカットや彫刻に適したレーザー加工機です。例えば、イルミネーションの看板、ディスプレイ、装飾品、おもちゃなどの製作に効果的です。正しいアクリル材料の選び方、レンズや加工テーブルの選択方法、そしてパラメーター設定など、アクリルをレーザー加工する上でお役に立つヒントやコツをご紹介します。


キャストと押し出しの違い

アクリルはキャスト(GS)押し出し(XT)の2種類の方法で製造されます。それぞれの製造方法は材料の特徴と関連しています。原則的に両方のアクリルともレーザーで加工できますが、加工中の反応が異なります。用途・アプリケーション別に適切なアクリルを選択するために、先ずはその違いについて基本的な情報を知っておきましょう。

キャスト材のアクリル(GS)

アクリルのキャスト板は、2枚のガラス板の間に液状のアクリル原材料を注入し、硬化させて成型します。この製造方法によって、xとyの方向に均質で高い硬度を持っている特徴があります。しかし板厚にバラつきがあり、約±15%の公差が生じます。またキャスト板は手作業のため、押し出し板よりも価格が高いです。 キャスト材をレーザーでカットすると、表と裏の両面ともバリがなく滑らかに仕上がります。レーザー彫刻も押し出し材より綺麗に加工できます。 トロテックが取り扱っている材料「トロテック商材」は、主にキャスト板になります。 ※日本で「トロテック商材」は販売しておりません。

押し出し材のアクリル(XT)

アクリルの押し出し板は、粘土状のアクリル樹脂をローラーに流し込み、押し出して製造します。この製造方法によって、xy方向に様々な特性が生まれます。さらに、板の厚さにバラツキが少なく、公差は±5%以下です。したがって、プラグ接続の用途などに適しています。大量生産が可能なため、キャスト材よりも安い価格で入手できます。また、一般的に押し出し材は、同じ厚さのキャスト材よりも低いパワーで加工できます。

しかし、キャスト板より硬度が低いため反りが出やすいのが特徴です。また熱に弱く、加熱部分が溶けやすいので、滑らかできれいに切断面をカットしやすいでしょう。彫刻も熱に弱いため、マットグレーになってしまうのでお薦めはできません。


アクリル加工に適した機種

トロテックのCO2レーザーは全てアクリル加工に適しています。例えば小型レーザーのSpeedy100も大型レーザーのSP1500も微細な彫刻と美しく滑らかなカットが可能です。差異があるとすれば、加工スピードと仕上りのクオリティの点でわずかに目に見える程度です。

レーザー出力レベル

アクリルをカットするのに必要なレーザー出力(W数)は、アクリルの厚さと目標とする生産性(加工スピード)によって異なりますが、生産性の高い加工には、60W以上のレーザー出力を推奨します。

大まかな目安としては、高品質でカットするのに、アクリル板の厚さ1mmにつき10Wになります。

(アクリル板の厚さは20~25mmまで)

正しいレンズの選択

正しいレンズを選択することは、アクリルをカットする際に本質的な役割です。材料が厚ければ厚いほど、レンズの焦点距離は長い方が適切です。

材料の厚み Speedy シリーズ SP シリーズ
薄いアクリル板<5mm  2インチレンズ 2.5インチレンズ
厚いアクリル板>5mm 2.5インチレンズ 5インチレンズ

焦点をずらす

6mm以上の材料を均一にカットするには、材料にレーザーを照射する焦点位置をずらします。

参考値としては、材料の厚さの約1/3をずらします。例えば、6mm厚のアクリル板ならZオフセット値(高さ調整)を-2mmにします。

正しいノズルの選択とエアアシストの調整

アクリル板をカットする際は、口径の大きいノズルを使います。そして調整可能でしたら0.2barまでエアアシストを減らします。こうすると材料が冷えるまでに十分な時間ができます。この方法は、特に透明なガラスの断面カットに効果的です。逆に口径の小さいノズルを使用した場合、あるいはエアアシストが強過ぎたりすると、材料が急速に冷やされるためカット面の仕上りが鈍く、白っぽくなります。

正しい加工テーブルの選択

適切な加工テーブルを選択することもまた、アクリルの仕上りにとても重要です。材料の大きさと加工用途によって異なりますが、基本的にアクリル カッティング ブレード、またはアクリル カッティング グリッドの使用を推奨します。

アクリル カッティング ブレードはカット中の反射を防ぐので、6mm以上の厚いアクリル板をカットするのに適しています。また100mm以上の大きなアクリルをカットするにも良いでしょう。小さいパーツ(材料)は下に落ちてしまうのでこのテーブルには適していません。

100mmより小さいパーツには、カット後もテーブルの下に材料が落ちないように、アクリル カッティング グリッドの使用、またはバキュームテーブルの上にアクリル カッティング グリッドを置くことをお薦めします。このテーブルには8mm厚のアクリルまでの使用に推奨します。さらに厚いアクリル板には別の加工テーブルをご利用ください。

加工テーブル 材料の厚さ 材料のサイズ
アクリル カッティング ブレード アクリル板 > 6mm 100mmよりカット幅が大きい
アクリル カッティング グリッド アクリル板 < 8mm 100mmよりカット幅が小さい

集塵システムの使用

適切な集塵システムを使用することはアクリル加工で不可欠です。それは、加工中レーザー加工機内に発生したガスを吸引して、排出しなければならないからです。品質の高い加工、特にカットにおいては、機器内での十分な空気循環が絶対に必要です。空気循環が不十分だと機器内にガスが発生し、発火の原因になります。但し、集塵脱臭装置を使用していても、加工中は絶対にマシンの側から離れないでください。

Atmos集塵脱臭装置

小型カメラで正確なアウトラインのカット

アクリルをカットしていて、カットミスで材料を無駄にしたことはありませんか?特にUVプリントしたアクリル板をアウトラインに沿って正しくカットしなければならないアクリルキーホルダーの製作。このアクリルキーホルダーの製作に使われているのが、トロテックの小型カメラシステム「Trotec Vision Print&Cut(トロテックビジョンプリント&カット)」です。

このTrotec Vision Print&Cutをトロテックのレーザーカッターに取り付けると、材料のセット時に位置がズレても自動で位置ズレを補正してアウトラインをカットします。それは、レーザーヘッドのカメラが印刷上とレーザーソフトウェア上の「レジストレーションマーク」を照合してカットするからです。したがって、材料の位置決めに時間を取られることなく、効率良く作業を進めることができます。何より、カットミスの削減につながります。

Trotec Vision Print&Cut(トロテックビジョンプリント&カット)


アクリルカットのパラメーター

アクリルのカットは、木材に比べて高い周波数を必要とします。高い周波数によって、材料にムラなくエネルギー(熱量)を照射でき、切断面が溶けて、ガラスのように透明で研磨されたような断面に仕上がります。

  • キャスト材のアクリル(GS)のカットには、5,000~20,000Hzの周波数を推奨します。
  • 押し出し材のアクリル(XT)のカットには、最大で5,000 Hzの周波数を推奨します。

周波数が低すぎると、引っかいた傷のような痕、いわゆるチャターマークといわれるものがカット面に見られる場合があります。これを防ぐには、カットスピードの周波数を上げるか、あるいはさらに下げる必要があります。しかし、カットスピードが遅すぎると、カットカーフが起こり、発火の原因につながる場合があります。つまり、安全で効率良くアクリルをレーザー加工するには、最適なパラメーター値を見つけ出すことがとても重要です。


アクリル彫刻のパラメーター

アクリルの彫刻には、原則として値が低いほど仕上りが良いという法則があります。ベストな仕上りは、アクリルの表面をスクラッチしただけで、白い彫刻が浮かぶ状態です。パワー(レーザー出力)が強過ぎると、彫刻は深く仕上りますが、白くならないのでコントラストが弱くなるでしょう。

ヒント:裏面を彫刻する

アクリルの裏面彫刻は、外部からの影響を受けないのでクオリティの高い商品になります。アクリルにプリントする場合も裏面の方が、見た目の素晴らしい商品になります。

注意:ジョブの反転を忘れずに

裏面彫刻の場合は、グラフィックソフトでデザインを反転(ミラー)して作成するか、あるいはデータ出力する際の印刷設定で反転するにチェックを入れてください。


アクリル加工のグラフィックソフト

ノード数を最小にする

グラフィックデータを注意して作図することもまたレーザー加工の品質改善にとって大変重要です。先ず外周カットラインのノード数を最小にします。これによって、レーザーが不必要な停止をすることなく均一に加工します。

カット開始点の適切な作図

カット開始点の設計もまた重要です。材料をレーザーでカットすると、カットの開始点と終点に縦線が入ってしまうことがあります。直線上での開始点、または曲線中央での開始点は特に目立つでしょう。したがって開始点は常に目立たないコーナー部分が良いでしょう。

かなり厚みのあるアクリルの場合は、実際のグラフィックの外側に開始点を設計するとよいでしょう。これは「リードイン」と言われています。このリードインは、仕上りのアウトラインの外側約3~8mmに引き、直線上のアウトラインを通ってから加工するようにします。このリードインは、グラフィックソフトで簡単に線を引くことができます。またトロテックのTroCAMパッケージソフトウェアの補助ツールを使って引くこともできます。

カット順の定義

大量のパーツを加工する際、カット順や配列も品質に影響を与えます。密集して配列した小さなパーツを大量にカットする場合、このエリアでは材料が相互に熱くなっていますので、発火の危険があります。大きな板材で小さなパーツを大量にカットしたい場合は、カット中に材料がクールダウンできるように、個々のパーツを配列することをお薦めします。この配列をグラフィックソフト(CorelDrawやAdobe Illustrator)で確認し、加工方向は下から上へ移動するように設定します。


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