
金属への刻印・深彫り
このチュートリアルでは、MOPAレーザーによる金属への刻印・深彫りの手順を紹介します。また、金属の深彫り加工に最適な加工時間および品質のパラメータについても解説しています。

金属へのレーザー彫刻
レーザーを使って、固体の表面を削り取ることで彫刻を行います。レーザーの強いエネルギーによって、鋼鉄やチタンなどの金属を瞬時に蒸発させることができます。この仕組みは、1)高いパルス出力(トロテックのファイバーレーザーでは最大10 kWのピーク出力)および、2)極めて細かいレーザー光の焦点(トロテックのF-160レンズでは約45 μm)という2つの技術によって可能になります。この方法により、金属表面に文字・ロゴ・シリアル番号などを彫刻することができます。彫刻を行うと、金属の表面が削られたり、色が変わったりします。また、刻印後に表面が茶色く変色することがありますが、これは金属が酸化(錆び)したものです。この変色は、もう一度レーザーを照射して研磨することできれいに取り除くことができます。ステンレス鋼への彫刻に適した条件は、高出力のレーザー、低い周波数(1回のパルスで強いエネルギーを発生)、250~900 mm/秒のマーキング速度です。このように、適切なレーザー設定を使えば、高精細で耐久性の高い彫刻が可能になります。

ステンレスへの深彫り
レーザーでの深彫り加工は、基本的に彫刻と同じ手順ですが、より複数のパスを使用します。 ここでは、2つの異なるパラメータについて解説します。
- 加工時間を優先
- 品質重視
品質を重視する場合に設定するパラメータでは、同じ彫刻深度に達するまでに約3倍の時間がかかることにご留意ください。 どちらの場合も、F-160レンズを装着した20ワットのMOPAレーザーを使用しています。 画像の上部には「加工時間の優先」の彫刻結果、下部には「品質優先」の彫刻結果が示されています。
1. 加工時間を優先する場合のレーザーパラメーター設定
最初のステップでは、加工時間を優先し、できるだけ短時間で深彫りを行います。レーザーパラメータは、目標の彫刻深度(この場合は200μm)に最速で到達できるように設定されており、彫刻の品質は考慮されていません。その結果、最大100μmの歪みが発生し、彫刻深度は目標の200μmから最大240μmの範囲になります。
出力 | 速度 | 周波数 | パルス幅 |
100% | 250 mm/s | 60 kHz | 200 ns |
フォーカス | ライン同士の間隔 | パス | 彫刻時間 |
フォーカス内 | 0.03 mm 両方向 | 32(深さ200 μmの場合) | 112秒(5×5 mmの正方形) |


2. 品質を重視する場合のレーザーパラメーター設定
ここでは、品質を重視する場合の深彫りをします。レーザーパラメータは、彫刻の品質を優先し、目標の彫刻深度(この場合も200μm)に到達できるように設定されています。彫刻時間は、加工速度を重視した場合と比較して約3倍になりますが、歪みの発生を防ぐことができます。彫刻深度は目標の200μmから最大220μmの範囲になります。
使用するパラメーター:
出力 | 速度 | 周波数 | パルス幅 |
100% | 900 mm/s | 180 kHz | 200 ns |
フォーカス | ライン同士の間隔 | パス | 彫刻時間 |
フォーカス内 | 0.03 mm 両方向 | 450(深さ200 μmの場合) | 375秒(5×5 mmの正方形) |



金属への深彫り加工の可能性は無限大
お客さまのニーズに合わせて最適なソリューションをご提案します
上記でご紹介した例のように属への深彫りの可能性は無限大です。レーザー加工は用途に応じてさまざまなパラメータを設定できます。時間を優先する場合は、比較的低速で少ない工程数で多くの素材を除去し、品質を重視する場合は、より多くの工程を高速で繰り返し、均一かつ精密に加工を行います。
当社では、専門スタッフがお客さまのご要望に応じた最適な加工方法をご提案し、サンプル作成も承ります。お気軽にご相談ください。