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ファイバーレーザー - 機能と応用分野

ファイバーレーザー – 概要

  • 定義:光ファイバーで光を伝送する固体レーザーで、通常は希土類元素をドープした光ファイバーを使用します。 

  • 主な特長:高精度、高効率、多用途性、そして優れた耐久性。 

  • 主な用途:精密な彫刻やマーキング 

  • 利点:コンパクト設計、省エネルギー、長寿命、低メンテナンス、非接触加工 

  • 制約:木材などの有機素材、透明ガラスなどの透明材料、 一部のプラスチック には適しません

レーザー技術は、製造業やデザイン分野における素材加工に革新をもたらしました。その中でも、精度・効率・柔軟なマーキング性能で際立っているのが、ファイバーレーザーです。本ガイドでは、ファイバーレーザーの概要、利点、代表的な用途、そして新しいレーザーを選定する際に重要な安全対策について解説します。 

レーザー装置の詳細

ファイバーレーザーと、その仕組み

固体レーザーの一種であるファイバーレーザーは、レーザー光と励起光の両方を光ファイバーで伝送します。活性媒質となる光ファイバーのコアには、一般的にイッテルビウムなどの希土類元素がドープされています。 

より具体的には、レーザーダイオードが励起光を出力し、915nm、977nm、1064nmといった波長の光を光ファイバーを通じてドープされたガラスファイバーに伝送します。光ファイバーは融着接続(スプライス)されているため、励起光やレーザー光が空気中を通る開放経路は生じません。この構造により、ファイバーレーザーは汚染や振動に対する非常に高い耐性を備えています。 

マーキングや彫刻用のファイバーレーザーの多くはパルス式であり、その多くはMOPA (Master Oscillator Power Amplifier:主発振器出⼒増幅器)レーザーです。コイル状に巻かれたファイバーによる単一パス増幅により、コンパクトな構造で広い増幅範囲と高い利得を実現しています。 

ファイバーレーザーでできること

通常、ピーク出力が10〜20kW、平均出力が10〜100Wのパルス式ファイバーレーザーは、さまざまな精密加工に適しています。高いビーム品質と優れた集光性を発揮するファイバーレーザーは、さまざまな用途に対応します: 

  • 複雑な彫刻およびマーキング:ファイバーレーザーは、金属や一部のプラスチック、セラミックに対する、恒久的で高コントラストなマーキングを実現します。精密な模様を高解像度で彫刻・マーキングできるため、デザインや文字、ロゴ、シリアル番号の刻印に最適です。さらに、パワー密度の高いファイバーレーザーは深彫りも容易です。トロテック製ファイバーレーザーの用途は、ジュエリー業界から自動車業界まで多岐にわたります。    
  • ファイバーレーザーのその他の用途:一部のファイバーレーザーは溶接や表面洗浄にも使用できるため、さらに幅広い分野で使用されています。 

他のレーザー技術との比較

さまざまな方式があるレーザー装置の中から、用途に最適なものを選ぶことは容易ではありません。レーザーの種類ごとの違いを以下に示します。 

ファイバーレーザー vsCO2レーザー: 

  • 速度と対応材料: 波長1.064マイクロメートルのファイバーレーザーは、極めて小さい焦点径を形成するため、その光強度は同じ平均出力を持つCO2レーザーの最大100倍にも達します。したがって、ファイバーレーザーは金属のアニーリングマーキング、金属彫刻、そして高コントラストなプラスチックマーキングに最適です。  

  •  一方、より波長の長いCO2レーザーは、木材、アクリル、皮革、紙、布地、ガラスなどの非金属材料のカット・彫刻・マーキングに最適です。 

  • 精度とビーム品質:一般に、より高い精度と優れたビーム品質をもつファイバーレーザーは、金属の切断面をより滑らかに仕上げることができます。 

  • メンテナンスと寿命:非接触でマーキング・彫刻を行うファイバーレーザーには摩耗部品がないため、寿命が長くメンテナンスの手間もほとんどかかりません。

ファイバーレーザー vsNd:YAGレーザー: 

  • 用途:パルス式ファイバーレーザーは、多くの用途で従来のYAGレーザーに代わるものとして、特にマーキングや彫刻分野で広く使用されています。一般的に、ファイバーレーザーは金属加工や高速生産などの産業用途により適しています。 

  • パルス特性:YAGレーザーは、ファイバーレーザー(10〜20kW)より高いピーク出力(30〜100kW)を発生させることができます。 

  • 使いやすさ:ファイバーレーザーには、設計のコンパクトさ、堅牢性、長寿命、そして全体的なコスト効率の面で大きな利点があります。 

ファイバーレーザー vsダイオードレーザー  

  • 材料と用途の多様性:ファイバーレーザーの通常の波長は1064nmです。この波長は金属への吸収度が高く、ファイバーレーザーが金属や一部のプラスチックへのマーキングに最適な理由はここにあります。ダイオードレーザーの波長は、ダイオードの種類によって異なりますが、一般的には450nm(青色光)または808〜980nm(赤外領域)付近です。450nmの青色ダイオードレーザーは、木材、皮革、一部のプラスチックなどの有機材料への吸収度が高く、ものによっては金属に対するマーキングも可能です。したがって、ファイバーレーザーが主に金属やプラスチックのマーキングなど特殊な用途に用いられるのに対し、ダイオードレーザーはより幅広い材料に対応できる汎用性を備えています。 

  • 金属の深彫り加工:ファイバーレーザーが金属の深彫りに適しているのに対し、ダイオードレーザーで同等の深さのマーキングを実現することはできません。 

  • コスト面:ダイオードレーザー装置(例:Speedy 100 cross )は、多くのガルバノ式ファイバーレーザー装置より低コストでより広いマーキング面積を提供します。  

ファイバーレーザーが長期的な投資として優れている理由

ファイバーレーザーの大きな利点のひとつは、その非常に長い寿命です。その長寿命を実現するため、各ポンプレーザーダイオードは間隔を空けて配置され、それぞれに独自のヒートシンクを備えています。ファイバーレーザーは通常なら、主要なメンテナンスや性能劣化が発生するまでに5万〜10万時間の耐用寿命があります。この長寿命という点で、ファイバーレーザーは長期的に見て賢い投資といえます。 

ファイバーレーザーの利点

ファイバーレーザーには、いくつもの優れた特長があります。 

  • 金属やプラスチックへの高速かつ高品質なマーキング 
  • 微細で精密なマーキング 
  • コンパクトでメンテナンス不要な設計:ガラスファイバーの大きな表面積と小さな体積は、効率的な冷却を可能にし、コンパクトで堅牢、かつ実質的にメンテナンス不要の設計を実現しています。 
  • 高いエネルギー効率:電気から光への高い変換効率(20%超)が、運用時のエネルギーコストを削減し、廃熱を低減します。 
  • 低ランニングコスト:同等の用途で従来のYAGレーザーと比較した場合、総所有コストは大幅に低くなり、長期的にもより経済的な選択肢となります。 
  • 高い耐汚染性:励起光とレーザー光を内部伝送する光ファイバーを高精度溶着接続(スプライス)しているため、開放光路が存在せず、粉塵や汚染物質に対する非常に高い耐性を備えています。 

ファイバーレーザー彫刻機で加工できない材料

高い性能を誇るファイバーレーザーにも、加工に制限のある材料があります: 

  • 透明な材料:透明なガラスなどの材料は、ファイバーレーザーでの加工が困難です。透明な材料はファイバーレーザーの波長を吸収しにくく、彫刻やカットの結果が不十分、またはまったく加工できない場合があります。  
  • 木材:ファイバーレーザーは木材のカットや深彫りには適していません。有機的で不均一な構造をもつ木材では、望む加工結果や一定の仕上がりを実現できない場合があります。木材のカットや彫刻には、一般的にCO2レーザーを使用します。 
  • 一部のプラスチック:一般的に、プラスチックへのマーキングはファイバーレーザーでも良好な結果を得ることができます。プラスチック内の顔料が濃色の場合は明るいマーキング、淡色の場合は暗いマーキングとなって、明暗のコントラストが生じます。一方で、一部のプラスチックは、その組成や熱特性によってマーキングに適しません。   
  • ファイバー損傷のリスクがある材料:非常に短いパルスや高エネルギーのパルスを発生させた場合、ガラスファイバー内部で極めて高いピーク強度が生じ、「カラーセンター」が形成されてファイバーが損傷する場合があります。 
  • その他の適さない材料:六価クロムを含む一部の皮革、カーボンファイバー、PVC、PVB、PTFE(テフロン)、および酸化ベリリウムなどの材料は、有毒ガスが発生するおそれがあるため、絶対にレーザーで加工しないでください。

ファイバーレーザーの運用における基本的な安全対策

ファイバーレーザーは人体に有害となるほど強力な光を放射します。したがって、レーザー装置の操作に際しては安全対策が最も重要です。主な安全対策: 

  • 目と皮膚の保護:レーザー光への直接曝露は、重度で永久的な視力障害や皮膚の火傷を引き起こすおそれがあります。ただし、トロテックのレーザーはクラス2レーザーのみを採用しているため、レーザー保護眼鏡などの追加の保護具は不要です。  
  • 煙や粉塵:特にファイバーレーザーで金属をカットする際には、煙や粉塵、粒子状物質が発生します。したがって、吸引装置や適切な換気システムを使用して吸入リスクを防ぎ、安全な作業環境を維持することが重要です。 
  • 火災の危険:高温によって可燃性材料が発火するおそれがあります。したがって、作業エリア内には可燃物を置いてはなりません。 

これらの安全対策および厳格な安全手順を遵守することが、オペレーターと周囲の安全を守るうえで不可欠です。 

ファイバーレーザーはお客様の用途に適しているでしょうか?

高い効率性、長寿命、そして金属やプラスチックに対する優れた加工精度を備えたファイバーレーザーは、非常に有効な投資となります。特に金属加工や精密加工を中心とする企業において、速度・品質・汎用性の面で得られるメリットは、高品質なファイバーレーザーへの投資に十分見合うものです。 

主な用途が金属への高精度かつ高速な彫刻やマーキングである場合、あるいは少ないメンテナンスで長期間稼働できる堅牢なシステムを求めている場合は、ファイバーレーザーが最適な選択肢です。ただし、材料や用途に応じた要件を十分に考慮することも重要です。当社のエキスパートが、お客様の決断をサポートし、ご質問にも喜んでお答えします。 

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