--------------------------

レーザー光のコヒーレンス(位相のそろい方)

自然科学において、コヒーレンスまたはコヒーレントな光とは、電磁波が空間的・時間的に一定の位相関係を保ちながら伝わることを指します。
これはレーザー光が持つ特徴のひとつで、レーザー光の波は揃ったリズムで進むため、一直線に遠くまで届きやすくなります。普段の生活では意識することは少ないですが、レーザーの光がはっきりとした直線を描くのは、このコヒーレンスによるものです。

用語の解説

コヒーレンスを解説する前に、まずレーザー光の基本的な仕組みを理解しておきましょう。
「誘導放出による光増幅」は、物理学の専門用語です。レーザー(LASER) という言葉は、光の物理現象(レーザー光)と、それを生み出す装置(レーザーマシンやレーザー光源)の両方を指します。

レーザー光とは:

  • 電磁波の一種

  • 非常に狭い周波数範囲を持つことが多い(狭帯域エミッター)

  • 非常に細く鋭いビームとして集中させることが可能

  • レーザーの種類によってコヒーレンス長は異なり、長いものもあれば短いものもある

レーザーは日常生活のさまざまな場面で活躍しています。例えば、プレゼンテーションでよく使用されるレーザーポインターや、工具、ブルーレイやCDなどの光ストレージメディアの読み取りなど、現代の生活に欠かせないものです。

位相バランスとは

コヒーレンス(coherence) という言葉は、ラテン語に由来し、「つながり」や「結びつき」 を意味します。物理学では、コヒーレンスは電磁波の特定の性質を指し、2つの波が一定の位相関係を保っている状態を意味します。この位相関係が安定していると、干渉によるパターンを正確に作り出すことが可能になります。位相が揃ったコヒーレントな光には、時間的コヒーレンス と 空間的コヒーレンス の2つの性質があります。
これらの違いは、簡単な思考実験を通じてイメージしやすくなります。

時間的コヒーレンス

場所で時間が経っても位相が変わらないことを指します。もしあなたが波のすぐそばに立ち、その波が横を通り過ぎるのを観察した場合、2つの波列の位相関係(波の山や谷のズレ)は変わらず一定のままになります。これが時間的コヒーレンスです。

空間的コヒーレンス

異なる場所でも位相が揃っていることを指します。光と一緒に移動できる「基準の枠」があると想像してみましょう。そして、その枠に乗って光と同じ速度で移動し、波を真横から観察するとします。このとき、異なる波同士の位相のズレ(山と谷の位置のズレ)は変わらず一定のままになります。これが空間的コヒーレンスです。 

非コヒーレント光との違い

例えば天井の照明といった通常の光源は、多数の個々の波列から構成される光を発します。自然光の光源すべてにおいて、放射される波列はコヒーレントではありません。その理由は、実際の光源である原子にあります。光の放射過程において、単一の波列が放射される場合、その時間はおよそ0.0000000001秒です。このことから、この波列の理論上の長さを計算すると3メートルになります。では、原子が光を放出する様子をイメージしてみましょう。光が通る経路の横に立ち、最初に通り過ぎる波列を観察するとします。その後、あるタイミング(この時間は決まっていません)で、原子が次の波列を放出します。この新しい波列にも「山」と「谷」がありますが、最初の波列とどのような位相関係(波のズレ)があるかはランダム です。これは、その後に放出されるすべての波列にも当てはまります。つまり、原子が放つ光の波列同士には、一定の位相関係がなく、毎回異なるということです。さらに、一般的な光源(太陽光や電球など)は、さまざまな波長の光を含んでいます。波長が異なれば、それぞれの波列の位相関係もバラバラになります。加えて、通常の光は特定の方向に揃って進むわけではなく、あらゆる方向に放射されるという特徴もあります。

レーザー光の時間的・空間的な位相の一致について

レーザー光は、時間的にも空間的にもコヒーレント(位相がそろっている)な電磁波です。つまり、進行方向だけでなく、その垂直方向においても一定の位相関係が保たれています。レーザー光では、ひとつひとつの波の列(波列)が非常に長く、かつ隣り合う波列同士が同じ位相で共鳴して振動しています。

レーザー光の主な特性

レーザー加工機から放たれる光は、非常に高い指向性を持ち、一点に集中した直線的な光線として照射されます。そのため、ほとんど散乱せず、エネルギーが狙った箇所に集中します。これに対し、一般的な光源は光をあらゆる方向に拡散して放出します。さらに、レーザー光は単一の波長(=単色光)で構成されているのも大きな特徴です。この状態は「モノクロマティズム(単色性)」と呼ばれます。レーザーの光波は、全てが完全に同期して振動しており、これにより非常に精密な加工や測定が可能になります。

レーザーのクラス分類

レーザー光は、放出される光の種類によっては人体に危険を及ぼす可能性があります。そのため、レーザー機器は異なる機器クラスに分類されており、分類は、メーカーがDIN EN 60825-1に従って行います。クラス1は、放射が完全に無害なレーザーを指します。クラス2以降では、レーザー光を直接目に向けると、効果の持続時間が0.25秒を超える場合、目や網膜に重大な損傷を引き起こす可能性があります。クラス3Bのレーザーは目に極めて危険であり、皮膚にも損傷を与える可能性があります。最後に、クラス4は、目や皮膚に深刻な損傷を及ぼす危険な機械を指します。このクラスでは、散乱した放射も危険であり、火災や爆発を引き起こす可能性があります。

会員 troGROUP Logo