有限会社戸谷木工所

当社は箱根の伝統工芸品である寄木細工の加工をおこなう木工所として、大正12年に創業しました。40 ～ 50年前までは貯金箱やオルゴールなどを中心に製造していましたが、時代が進むにつれ、そういった工芸品の市場は縮小。全盛期には箱根周辺に500社以上あった同業の木工所が、今では100社を下回っています。そこで当社は工芸品以外の新しい売り上げの柱を模索し始めました。

そのような流れから、2005年に日本製のレーザー加工機を導入し、オリジナルの木札や温泉旅館などで使われるルームキー、ホテルのサイン看板などの製作を始めました。当時、箱根周辺でレーザー加工機を使っている木工所は他になく、導入から製造まで手探りで行いました。

実際にレーザー加工機を使用してみると、使用前には予想できなかった問題がいくつか起こりました。木材をカットした時に出るヤニや煤でレンズが傷んでしまったり、自力でレンズを修正しているうちに焦点が合わなくなったり、レーザー光線が跳ね返って製品を傷つけてしまうこともありました。また、旅館の看板のような大きな商品の場合、毎回原点からヘッドが移動するのに時間がかかって作業がはかどりません。そこで、これらの問題を解消するレーザー加工機はないかと探していたところ、トロテック社製のレーザー加工機に巡り合ったのです。

最初に導入したのはSpeedy 300（30Ｗ）でした。導入する際に海外の他社製品とも比較検討しましたが、主に３つの要素が決め手となり、Speedy 300を選びました。

１つは、以前の機種でストレスを感じていた原点の位置です。トロテック製の場合、ヘッドが動き出す原点を任意で決めることができます。加工したい部分に原点を合わせておけばヘッドの移動時間を待つことがないので、作業がはかどります。

２つ目はヘッド部のレンズやミラーを防護する技術です。トロテックのレーザー加工機は、加工エリア内で発生するガスや粉塵から光学部品や駆動部品を防護するように設計されています。これにより、加工の品質だけではなく、粉塵が多く発生する使用状況でも安定して加工することができます。

３つ目は精密な加工ができること。小さい商品に細かな文字を入れる際、文字が潰れてしまいますが、トロテック製のヘッドは直径が小さく、精密に加工ができます。以前、自動車販売店のノベルティ用ボールペンに名入れ加工を行いましたが、かなり小さい文字でも潰れることなく綺麗に仕上げることができました。他にも、音が静かなので夜間も作業できる点や、パラメーターの設定を変えることで簡単に彫刻の濃淡を表現できる点も気に入っています。

Speedy 300を導入後は、従来と違う新規の顧客からの依頼が増えました。例えばスケートボードの加工です。東京オリンピックの影響でスケートボードの需要が高まり、販売店から「スケートボードにロゴを入れてほしい」という注文がありました。他社製のレーザー加工機だとスケートボードの湾曲した部分とヘッドがぶつかり、物理的に加工できないというケースがあるらしいのですが、トロテック製ならヘッドを任意の位置から動かせるので加工が可能です。トロテックを使っていることによって、他ではできない仕事を当社にわざわざ注文していただいたのは嬉しいですね。

現在、当社はSpeedy 300（30Ｗ）に加えて２台のトロテック社製レーザー加工機を導入しています。２台目に選んだのはSpeedy 400（100Ｗ）。看板、アクリルなどの切断用に使用しています。2020年にはSpeedy 300（60Ｗ）を導入。出力数を30Ｗから60Ｗに上げた理由は、加工速度が速く、加工できる商品の幅が広がるからです。１台目を導入したのが10年以上前ということもあり、老朽化に備えてという理由もありますが、10年以上使ってもほとんど壊れたことはありませんし、精度も安定しています。メンテナンスの対応が早いのも嬉しいです。万が一トラブルが起こった時も、すぐにトロテックのスタッフがサポートに来てくれます。仕事が忙しい時期でも安心して使うことができます。

最近ではキャンプ道具の薪割り台や、雛人形、五月人形の立札の名入れを行っています。今後も看板や名入れ加工を基盤に、レーザー加工で何か新しいものが作れないかとアンテナを張り、仕事の幅を広げていきたいと思います。