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資生堂ホリデープロモーション

レーザー加工の最先端技術で、「紙の温もり」と「イラストレーターの世界観」を再現!
銀座から想いが伝わる、想いが広がるペーパーアートを世界に配信。

資生堂のプロモーション制作に、レーザーカッターが活用

資生堂は2016年ホリデープロモーションとして、「銀座から想い広がる、ペーパーカットアート」を制作。店頭ディスプレイ、ムービー、そしてデジタルコンテンツに展開されました。その繊細なペーパーアートのカットにはHappyPrinters原宿にあるトロテック・レーザーカッターを使用。

ペーパーアート誕生の背景、レーザーカッターによる制作方法や工夫ポイントについて、資生堂の髙田氏、プロダクション会社・ビービーメディアの宮﨑氏と岡氏、実際のレーザー加工を担当されたHappyPrintersの杉原氏にお話しを伺いました。

ブランド「Shiseido」ホリデーチーム
写真左から(敬称略):
株式会社資生堂 アートディレクター 髙田 大資
ビービーメディア株式会社 映像プロデューサー 宮﨑 真也
ビービーメディア株式会社 アシスタントディレクター 岡 美里
HappyPrinters CCO 杉原 彩子
(ホリデーチームのスタッフ:総勢約25名)

資生堂ホリデープロモーション

ブランド「Shiseido」が、毎年、ワールドワイドに展開しているクリスマス時期のプロモーション。限定のギフトボックスとショッピングバッグ、店頭ポスターなどが展開。2016年は「Share Beauty」*をテーマに、ムービーとデジタルコンテンツも制作。

レーザーカッターの用途

アニメーションと店頭ディスプレイ用のペーパーアート制作。アニメーション用750枚以上、ディスプレイ用250枚以上の紙をレーザーでカット。

使用機種
  • Trotec Speedy 300 レーザー加工機 (CO2、80W)
  • Atmos DUO Plus 集塵脱臭装置 (200V)

*2016年のテーマ「Share Beauty」は、美しくなりたい、綺麗になってもらいたいという気持ちを、家族や恋人などの大切な人とシェア(共感)できるようにサポートしていきたいという考えから生れました。そしてこのテーマを伝えるデザインは、資生堂の伝統な唐草が伸びていくさま、「Growing Karakusa」をコンセプトにして、人と人のつがなり、想いが広がっていく様子を表現しています。

なぜホリデープロモーションにペーパーアートを制作したのですか?

【髙田 氏】テーマ「Share Beauty」で我々の想いを伝えるには、「Gift Box」が一つの基点になると、制作会社のビービーメディアさんと話し合っていました。化粧品を包装するギフトボックスを基点に、お客様とコミュニケーションする方法がないかと考えたのです。ボックスを開けると、その化粧品を買いたいと思った時のお客様の気持ちが何かで表現できなかと。そこでボックスの中で物語が起きる、例えばこのシーズンに世界中で行われているギフト交換を物語にして、ムービーで展開したら、気持ちのシェアが伝えられるのではと思いました。

【宮﨑 氏】ボックスの中のムービーをどのように展開させるかを調べていたら、ペーパーアートの資料や動画を見つけました。ペーパーアートもレーザーカッターも、以前から知っていましたが、実際に制作するのは今回が初めてです。

【髙田 氏】ペーパーアートは、紙芝居のように言語に関係なく理解し合えます。また紙の温もりがイラストレーションと相まって、今回のコンセプトを伝えてくれるのではということになり、ボックスの中でペーパーアートの物語が展開していく表現に決まりました。

ペーパーアートの制作にトロテック・レーザーカッターを選んだ理由は?

【髙田 氏】このイラストレーションがとても繊細で、非常にディテールが細かいので、イラストレーターの描いてくれた世界観を損なわずに美しい紙のカタチにしてくれることが必要でした。その時、レーザーカッターの精度がすごく魅力的だったのです。

【岡 氏】レーザーカッターを使える場所を探して、HappyPrintersさんに来たら、こちらのレーザーカッターは「スピードが速く、日本の中ではかなり高精度の方だ」と聞きました。他の施設でも恐らく別メーカーのマシンで線の細さを何回かテストカットしましたが、やはりその中でもこのレーザーカッターのスピードと繊細さはすごく良かったです。

紙の種類は最初から決まっていたのですか?

【宮﨑 氏】先に使うレーザーカッターを決めてから、紙はテストして選びました。元々はラシャという紙を使っていましたが、監督からより紙の質感が映像で見えるものという要望がありました。レーザー光が通った時に焦げがでないぎりぎりの紙質を探し、10種類くらいを試してハーフエアを使用することになりました。

ペーパーアートの制作工程を教えてください。

【岡 氏】イラストレーターさんの手描きの原画をスキャンして、データに起こします。次にIllustratorで線をパス化します。そこから一番大変だったのが、一枚の紙の中で髪の毛などがバラバラにならないように一つの線でつなげる作業でした。イラストレーターさんの絵の雰囲気を損なわないように線をつなげてデータ化したら、それをHappyPrintersさんに送信して、ひたすらレーザーで切ってもらいました。アニメーションの尺は1分11秒で、1秒間に8枚のペーパーアートを使用していますので、テストも入れて、1,000枚以上の紙を切ってもらったと思います。

【杉原 氏】受け取ったデータをIllustratorからCorelDRAWに変換しました*。Illustratorの時点で完璧なデータだったのですが、ものすごいパスの量でしたのでチェックしながら進めていました。例えば、街の窓の一部が抜けないので、なぜだろうと思ってデータをよく見るとその線だけ透過がかかっていたり、パスが重なっていて2回切ってしまうことがありました。でも岡さんがレーザー加工用のデータ作成に慣れてきて、すごく詳しくなっていましたね。

*Adobe Illustratorからも、直接レーザー加工用のデータに出力することができます。

制作工程で工夫したことは何ですか?

【杉原 氏】実際にカットしていて、イラストレーターさんが手描きした線と比べると、レーザーで切り取った線の方がちょっと細くなる感じがしました。

【髙田 氏】イラストはえんぴつで描いた後、ペンで清書しています。レーザーカッターがどれくらい細い線まで対応できるのか、イラストレーターさんとも共有して最初テストしました。例えば数値は仮ですが、0.1~0.9mmまで並べた線のパスを用意して、1回レーザーで出してイラストレーターさんに見せ、どの太さでいくのかを相談しました。

【岡 氏】テストは企画と平行して行っていました。一枚のイラストに対して線幅を調整し、レーザーでテストカットしていきます。密集度のある箇所は、今までと同じ線幅で切ってしまうと紙が無くなってしまう程精細なので、そこだけさらに線を細くしてバランスを見ながらテストしていました。密集しているところは、本当に0.0ミリの世界です。

【杉原 氏】パラメーターは紙やイラストの種類毎に変えて、焦げないように、きちんと抜けるように、何回も何回もテストしました。さらに綺麗なだけではなく、速くしないと大量のカットが終わらないのでスピードも調整しました。また、焦げがでないようにレンズは毎日磨いていました。紙は切っている間に浮いてくるので周りをきちんと止めて、加工中もずっと見ていました。抜けた紙が立ち上がると一時停止して取り除いていました。

レーザー加工で苦労した点はありますか?

【杉原 氏】コマ送りの絵なので、今切ったものなのか前のものなのかがパッと見てわからない点です。例えば、唐草がちょっと伸びているだけの違いなのです。だからカットしたイラストは、目で見ても違いがわからないので、データのリストを作り、レーザー加工時は、JobControlレーザーソフトウェア上のデータ名(ジョブ)で管理していました。また、切った絵を取り出し、それを一枚一枚PP袋に入れてデータ名を書くのですが、ツタの抜け落ちた部分も含めて、袋にきちんと入れるのが大変でした。

レーザーカッターを使ってよかった点は?

【髙田 氏】アニメーションをつくるという工程自体、ものすごく時間と手間がかかる仕事なので、スピードは相当助かりました。 

また、非常に繊細ですよね。不思議と感情が伝わってくる。レーザーカッターは人工的な機械で、最先端な技術ですが、なぜかアナログな温もりがあります。絵がモノになる手触りというか、空間が出てくると入り込みやすいというか、紙芝居のような優しい世界を再現していますね。技術の進歩によって、お客様に温もりある「資生堂らしいギフト表現」ができたので、レーザーカッターとは本当によい出会いでした。

【宮﨑 氏】ペーパーアートの制作期間は、切り始めてから4週間かかりました。(レーザーの)このスピードでなければ終わらなかったと思います。また唐草は大事な胆の部分なため、細くというよりはある程度サイズを保ちたかったので、レーザーカッターはそういう細かい微調整が利き、使ってよかったです。

【杉原 氏】チームの 皆さんがすごく丁寧に各工程をやっていて、その丁寧さをレーザーカッターがきちんと仕上げてくれたと思います。また、お店のお客様からもかなり評判がよかったです。普段よく来るお客様でも「こんなにレーザーってこまかく切れるんですか」とかなりびっくりしていました。

ペーパーアート・プロモーションの反響はいかがでしたか?

【髙田 氏】一般的な反響は現在収集していますが、弊社公式のFacebookの紹介でも反響があったり、デザイン情報サイトのJDNさんや、弊社の「こちら、銀座 資生堂 センデン部」サイトで紹介してもらえたこともあり、SNSなどを見ているとプライベートなやりとり以外でも、シェアしてくれていることが嬉しかったです。その反響を見ていただいて、宣伝会議さんがブレーン3月号で紹介いただけたり、繋がっていくことができました。

今後、レーザーカッターを使ったプロモーションは?

【髙田 氏】今回の経験を活かしてまた何かできればと思っています。実は同時期に、レーザーで焦げができるのをHappyPrintersさんで教わって、銀座・資生堂パーラーの「のれん」のウィンドウディスプレイもこちらで加工してもらいました。細かい唐草模様は切り抜いて、ロゴは焦がしています。材料に羊毛紙を使っていますが、焦げる紙と焦げない紙を検証し選びました。こののれんはウィンドウ用のすごく大きなディスプレイで、カットできる最大サイズの紙をつなげています。だからレーザーでもう少し大きいサイズができるといいですね。レーザーカッターは今回初めてプロモーションに使用したのですが、また使いたくなりました。

(取材2017年1月)

※本文に記載している機械の機能・効果・仕様等は、取材時の情報です。

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